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不登校だった中学生が突然学校に行き始めたたった一つの理由【前編】


僕は、もう学校に行かない。そもそも学校に行く意味がわからない。好きでもない勉強をして、何も分かってくれない教師たちに口を挟まれる。そんな世界はもうごめんだ。
 
新緑の5月。
 
木々のみずみずしさとしなやかさが気持ちよい
 
希望と始まりを感じさせる季節のできごとだった。
 
シンイチロウの決意は固かった。
 
不登校になったのは些細な理由。
 
学校でのちょっとしたトラブルから、今まで溜まっていた全てが爆発した。
 
 
 
父であるフジオは中規模だが、
 
県内では大手と呼ばれる企業の課長を勤め、
 
母カヨコは専業主婦。
 
6年前には夢のマイホームを建て、この街に越してきた。
 
小学生の頃から何不自由なく育ててきたつもりだった。
 
小さな頃からスポーツに励み、成績だって決して悪い方ではない。
 
中学に入ると塾に通い、友達ともそれなりに楽しんでいるように見えた。
 
 
母親・カヨコはそんな息子の突然の「不登校」に
 
動揺を隠しきれなかった。
 
 
「なんで急に、学校に行かないなんて言い始めたの・・・」
 
「一体なにが不満だって言うの・・・」
 
「私の何が悪いというの・・・」
 
「最近の若い子供たちの考えることはさっぱりわからないわ・・・」
 
「もう終わりだわ・・・」
 
 
カヨコの心は、息子の不登校以来、すっかり荒み切っているようだった。
 
 
家族会議を開いてみたりもしたが、何を試してもダメ。
 
裏目裏目に出ているように感じていた。
 
不登校になってからというもの、
 
カヨコの心は次第に生気を失い、
 
シンイチロウの心がますます見えなくなっていった。
 
 
 
父親のフジオは、仕事の忙しさもあり、
 
まともに取り合ってもらえなかった。
 
「気が向いたら、また行くようになるだろう」
 
そんな夫のノンキ加減に、
 
カヨコはほとほと嫌気がさし始めていた。
 
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カズオ「コーチングを、受けてみたらどう?」
 
カヨコの弟であるカズオは、電話口でそう持ちかけた。
 
カズオは、「プロコーチ」として
 
全国で活躍する優秀なコーチだった。
 
 
 
カヨコ「何よそれ?不登校とどういう関係があるっていうのよ?」
 
 
 
普段、主に企業などを相手に活躍しているカズオの様子から
 
カヨコは「コーチング」と「不登校」について、
 
全くイメージが繋がらなかった。
 
カヨコは弟の優しさにありがたい気持ちを感じながらも、
 
最近の自分の混乱と落胆に、少し苛立ってしまっていた。
 
 
 
カズオ「まあ、いいからさ、久しぶりにシンイチロウにも会いたいし」
 
 
 
翌日、カズオは早速カヨコとシンイチロウを訪ねる約束をして
 
電話を切った。
 
 
 
カヨコ「カズオおじちゃんが明日来るって。シンイチロウに会いたいって」
 
 
カヨコはシンイチロウに声を掛けた。
 
 
シンイチロウ「ふう・・・」
 
 
 
シンイチロウはため息のような返事をして、
 
自分の部屋へと戻っていった。
 
大人が寄ってたかってオレの不登校を大騒ぎしやがって。何が気に食わないんだよ・・・オレの勝手だろ
 
シンイチロウは、周りの大人が騒ぎ立てている現実に苛立ちを隠せなかった。
 
大人たちが、寄ってたかって自分の説得を試みる。
 
そんな何もわかっていない大人たちへの苛立ちと
 
自分の未来への漠然とした不安や恐怖。
 
そんな色々な感情が
 
シンイチロウの心をカラカラにさせていった。
 
カズオおじちゃんとは、正月以来の再会だった。
 
 
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カズオ「お邪魔しま〜っす!」
 
カズオは大きな荷物とともにやってきた。
 
 
カズオ「こないださあ、仕事で青森に行ってさあ、そしたらリンゴ農家のじいちゃんと仲良くなって、リンゴめちゃめちゃ送ってくれてさあ!」
 
 
カズオ「おお!シンイチロウ!リンゴ食うか?これめちゃ甘いぞっ!」
 
 
シンイチロウは、なんだかカズオの登場に
 
すっかり圧倒されてしまっていた。
 
 
 
カズオ「ほい!青森の日本一を味わえ!」
 
 
 
カズオは嬉しそうに、リンゴを差し出した。
 
 
 
シンイチロウ「おお・・・甘い・・・」
 
 
 
リンゴの思わぬ甘さに
 
シンイチロウは思わず笑みがこぼれた。
 
カズオが持ってきてくれたリンゴは
 
今まで食べたリンゴの中で
 
圧倒的に一番甘いリンゴだった。
 
 
 
カズオ「シンイチロウ、学校行ってないんだって?」
 
 
カズオはいきなり核心をついてきた。
 
シンイチロウの心は一気に動揺し、身体は硬直した。
 
始まったよ。きっと説教が来る・・・ああ。また説教か・・・
 
カズオの様子を伺うように
 
シンイチロウはゆっくりと顔を上げた。
 
 
 
カズオ「いんじゃねえの?学校行かないっていうのは、シンイチロウの選択だろ?」
 
 
カズオの発言にシンイチロウは驚いた。
 
え?いいって?どういうこと・・・?オレを説得しにきたんじゃねえのか・・・
 
シンイチロウの心の中で、動揺は混乱へと変わっていった。
 
 
 
カズオおじちゃんは、今日オレを
 
「学校に行くように」説得しにきたはず。
 
なのに「いんじゃねえの?」ってどういうことだ?
 
え?学校行かなくていいのか?
 
シンイチロウは完全に混乱しながら、恐る恐る口にした。
 
 
 
シンイチロウ「行かなくても・・・いいの?」
 
 
カズオ「いいじゃん!だって行きたくないんだろ?それをちゃんとシンイチロウが決めたなら、素晴らしいじゃん!」
 
 
カズオおじちゃんの暖かく、なんの曇りもない屈託な笑顔が
 
シンイチロウにはなんだか眩しく映った。
 
 
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カズオ「それよりさ、先週のジャンプ見た?やっぱルフィーやってくれたよな!だからオレ、ONE PEACE好きなんだよ!」
 
カズオは突然マンガの話題を始めたかと思うと
 
自然とシンイチロウもお気に入りである
 
「ONE PEACE」の話題に花が咲いた。
 
 
 
シンイチロウ「やっぱりあれだよ!マリンフォード編が一番だよ!」
 
カズオ「オレはさ、ウソップ村編も以外と好きだけどな!」
 
 
 
それぞれ、好きなキャラクターやストーリーについて
 
時間も忘れて語り合っていた。
 
シンイチロウにとって久しぶりに楽しい時間だった。
 
そういえば、不登校以来、友達にも会っていなかった。
 
こんな会話も最近していなかったな・・・なんて思ったりもした。
 
 
 
 
カズオ「でもやっぱルフィーなんだよな。オレが一番好きなのは。」
 
 
 
 
どのくらいONE PEACEの話をしただろう・・・。
 
話も終盤に差し掛かった頃、カズオは囁くように語り始めた。
 
 
 
 
 
カズオ「シンイチロウさ、ルフィーの凄さって、なんだと思う?」
 
 
カズオはシンイチロウに語りかけた。
 
 
 
シンイチロウ「う〜ん。まあ・・・ゴムゴムの!っていうのは凄いと思うけど、やっぱなんか、仲間思いっていうか、そういう部分かな」
 
 
 
 
カズオは満足そうな笑顔で、何度も何度も頷いてくれた。
 
 
カズオ「だよな。ルフィーのリーダーシップは素晴らしいよな。あの圧倒的な存在感があるから、ゾロもサンジも他のみんなも付いていくんだもんな」
 
 
 
シンイチロウも、ONEPEACEの登場人物たちの顔を思い浮かべながら
 
なんだか誇らしい気持ちになっていた。
 
「麦わらの一味」たちの世界に浸っていると
 
シンイチロウはいつもこんな気持ちになる。
 
 
 
 
カズオ「でも、オレ思うんだ。誰でも、ルフィーになれるって」
 
 
 
カズオ「ルフィーが持ってる、たった一つの“大切な”ものって、何か分かる?」
 
 
 
 
カズオはシンイチロウに優しく語りかけた。
 
 
シンイチロウ「う〜ん。なんだろう・・・。リーダーシップとかかな?」
 
 
 
 
 
優しい笑顔のカズオは、シンイチロウにさらに語り始めた。
 
 
カズオ「そうだね。リーダーシップ。確かに凄いよなルフィーは。でも、もっと大切なたった一つのものがあるんだ」
 
シンイチロウ「なに?たった一つのもの・・・」
 
 
 
シンイチロウは純粋にそのたったひとつを知りたかった。
 
シンイチロウは「大人の視点」から見るONE PEACEは
 
どう映っているのか?興味があった。
 
カズオは、ゆっくりと姿勢を正し、語り続けた。
 
 
 
 
カズオ「ルフィはさ、でかい、でかすぎるくらいのゴールを持ってるんだ」
 
シンイチロウ「でかすぎる・・・ゴール・・・。」
 
 
 
 
シンイチロウはカズオの言葉に思いを巡らせた。
 
でかい、でか過ぎるくらいのゴールって、なんだろう?
 
 
カズオ「海賊王にオレはなる!って、素晴らしいゴールだと思わない?」
 
 
ONE PEACEの主人公であるルフィーの打ち立てたゴール、
 
「海賊王にオレはなる!」
 
その突拍子もない、子供のようなゴールに、
 
仲間たちは共感し、やがてそれは単なる「夢」ではない
 
現実味を帯びていくストーリーだ。
 
 
 
カズオ「ぶっとんだ、ドでかいゴールがあるからこそ、人間は力や才能が発揮できるんだ」
 
 
シンイチロウはルフィーが乗り越えてきた
 
数々の困難に思いを巡らせていた。
 
仲間を助け、自らを奮い立たせ、
 
そして仲間と共に、ゴールに向けて挑み続ける。
 
そんなパワーは確かに「海賊王にオレはなる!」
 
という一言に集約されているような気がした。
 
 
 
 
シンイチロウ「でっかい、ゴール・・・」
 
カズオ「そう。でっかいゴール。でっか過ぎるゴールがあると、大変なことも、辛いことも、楽しんで乗り越えられるんだ。」
 
カズオ「だってさ、普通に考えてさ、自分の身体がゴムみたいにビヨンビヨンになったら、オレだったらヘコむぜ!」
 
カズオ「だけど、ルフィーはそれすらも力に変えたんだ。そんなルフィーに力に与えたものこそ、でっかすぎるくらいのゴールだったんだよ」
 
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シンイチロウは、ルフィーの余韻に浸るとともに
 
「自分のゴールってなんだろう・・・」
 
という思いを巡らせた。
 
 
カズオ「オレがシンイチロウに今日伝えたかったのはそれだけなんだ。シンイチロウにも、でかすぎるくらいのぶっとんだゴールを見つけて、ルフィーみたいに輝いて、人生を楽しんで欲しいんだ」
 
 
シンイチロウは自分がルフィーになったところを想像していた。
 
なんだか身震いがしてくるような感覚だった。
 
自分の「でかすぎる」ゴールってなんだろう?
 
シンイチロウはでかすぎるゴールが欲しいと心から思った。
 
むしろ、自分が求めていたもの、
 
心のどこかで感じていたものの答えが
 
そこにある気がした。
 
 
カズオ「ゴールさえ見つかれば、学校なんてどうでもいいんだよ。必要であれば行けばいいし、必要なければいかなきゃいい。」
 
 
カズオは優しくシンイチロウを見つめていた。
 
 
シンイチロウ「オレのでかすぎるゴール・・・見つかるかな?」
 
 
カズオ「大丈夫!絶対見つかるよ。焦らずじっくり、自分との対話を楽しみながらゴール探しを楽しむといいよ!これからが楽しみだなシンイチロウ!」
 
 
シンイチロウはカズオの言葉に大きく頷いた。
 
なんだか心が楽しくなって、
 
今までの沈んだ気持ちがウソのように、
 
重く黒いドアの先に、少しだけ眩しい光が見えたような気がした。
 
 
シンイチロウ「オレ、でっかすぎるゴール見つけたいよ。もし見つかったら、応援してくれる?」
 
カズオ「もちろんだよ!オレを誰だと思ってるんだ?超スーパーコーチだぜ?オレはシンイチロウのファン第一号さ!」
 
 
シンイチロウはなんだかたまらなく嬉しくなった。
 
その勢いで、さらに残ったリンゴを全て平らげた。
 
カズオ「おお!いきなりイイ勢いだ!シンイチロウのゴールが見つかるのも時間の問題だな!」
 
 
そう言うと、カズオはシンイチロウの家を後にした。
 
キッチンで二人の会話を楽しそうに聞いていたカヨコは
 
思わず涙ぐんでしまっていた。
 
楽しそうにしていたシンイチロウ。
 
明るい表情で何かに思いを巡らせるシンイチロウ。
 
そんなシンイチロウを見たのは、
 
初めてかも知れなかった。
 
 
 
カズオ「ネエさん。シンイチロウのこと、ゆっくり見守ってやってよ。シンイチロウはもう大丈夫だよ。心配いらない。そんでもって「やりたい!」と言ってきたことはとにかく何でもやらせてやって欲しいんだ」
 
 
玄関を出たカズオは、カヨコとそんな会話を交わした。
 
カヨコは涙をこらえながら、
 
カズオの言葉にただ、何度も頷いた。
 
 
 
 

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